病気・昆虫

 バラにはいろいろな虫がやってきますし、病気にかかりやすい品種もあります。私の庭は緑が多い住宅地で、近くには山林もありますので昆虫が来て蕾、葉を食べます。私たちのバラ栽培は家族の生活を支える切り花生産農家でも、有料のバラ園でもありませんので、虫食いがあっても問題なく、薬を繰り返し散布して害虫、病気を徹底的に排除する必要はないと思います。無農薬を目指しているわけではないですが、薬剤を散布する必要性をあまり感じません。花の匂いを嗅ぎながら枝、葉(表裏)、株元を週1回でいいので観察し異常を早く見つけることが大切です★★★。50株あっても30分かからないです。

 害虫、菌による病気、殺菌、消毒については科学的専門家のアドバイスを参考にするようにしてください。虫が嫌いな人も多いですがよく見るととてもかわいく見えます。

 

昆虫・害虫

栽培家からすれば”害虫”かもしれませんが、食べ物、子孫を残すために”昆虫”はやってきます。バラゾウムシに蕾をやられても、以後は他の蕾に栄養が行きます。チュウレンジバチの幼虫に葉を何枚も食べられても、また芽が出てきて葉をつけます。水・日光・土壌改善・肥料の★★★の基本項目に注意してどんどん株を育てて花を咲かせましょう。

 全ての害虫に防除的に薬剤散布するのは大変ですので、虫を見つけたらティッシュ等で捕殺する。たくさんいる場合はキンチョールなどスプレー式の殺虫剤を部分的に軽く噴霧します★★★。私はバラへの薬剤の散布回数は年に2、3回、スミソンを散布する程度です。連用しないので薬剤散布のローテーションも不要です。テッポウムシ以外は”軽症”なので水・日光・土壌改善・肥料を確実にし、成長させることで虫の被害を補う方法をお勧めします。

 昆虫大嫌い派の方のために以下記載しました。環境により発生頻度に違いがあり、どれを必ずやってくださいという優先順位が付けにくいです。あまり害虫を気にしていないため画像を持っていないです。できるだけ撮影してアップします。

コガネムシ、チュウレンジバチの幼虫、バラゾウムシ、アブラムシ、イラガ 

捕殺またはスプレー式殺虫剤で対応できます。庭全体に定期的に薬剤散布し防除する必要があるのか、するべきかどうかは園主の判断にお任せします。殺虫剤のほとんどが有機リン系の殺虫剤です。私はチュウレンジバチでは葉を多く失う、バラゾウムシでは蕾を失うので、イラガは危険なので見つければスプレー式殺虫剤の部分駆除で対応しています。かわいいミツバチも来ますのでできるだけ薬剤散布はしていません。食べられればその分他の蕾、葉に栄養が行き別の花、葉が大きくなります。自然の摂理と理解して放置しています。スプレー式殺虫剤は十分な殺虫効果があり、揮発性で散布後12時間でほぼ蒸発します。一般に使われている水溶性殺虫剤は長く残りますので、花をの香りを楽しむ、切り花にするにはよくないです。

花の雄しべ、雌しべをもぐもぐしているかカナブン、コガネムシも放置しています。カナブンは害がなく、コガネムシの幼虫が根切り虫になります。土に牛糞堆肥を混ぜた場合はその匂いでコガネムシが産卵します。堆肥を混ぜた土は土中に配置し表面の5cmほどは堆肥がない土で覆います★。この方法で冬季に株の周辺を掘り起こした時もコガネムシの幼虫を発見することはなくなりました。コガネムシも産卵さえしなければ大きな被害ないです。尚、コガネムシの幼虫が根を食べるという前提で記載していますが、摂取生態は確認できていません。

ハダニ ベランダでは★★

 葉の裏に住みつくので発見が遅れます。表から見ると葉が白っぽくなります。雨のかからないベランダ栽培ではほぼ必ず発生します。6月以降2週間に一度葉に水をかけることで防げます。大量発生しても葉裏に霧状の水をかければ死滅します。卵が残っている場合もあるので10日後もう一度。ハダニは水で完全に駆除できますので殺虫剤は不要です。雨のかかる地植えでは心配無用です。牛乳を薄めてかける方法はタンパク質が付着して葉の呼吸障害など別の問題を起こします。15年以上前ベランダ栽培の時はハダニを見ましたが、庭では全く見ないので画像がないです。

カイガラムシ

12月-2月剪定時に枝をよく観察して、殻を作る前の1㎜程度の幼虫をブラシで取り除けば夏以降も大繁殖はしないでしょう。1月には200~400匹単位で群生しています。これを見逃すと夏には大変なことになり、翌年には数千~万匹になります。6月にも観察してください。殻ができたカイガラムシは歯ブラシでは取れませんが、100均でも売っている細い真鍮のワイヤーブラシでなでるだけで落とせます。カイガラムシの駆除に殺虫剤は不要です。2016~18年は多く見ましたが、この1,2年ほとんど見なくなりましたので、画像がないです。

 

黒点病に弱いアイスバーグです

ハキリバチが巣を作るために丸く切り取ります

カイガラ虫の幼虫です。10月‐12月は卵から孵化し、集団でいます。12月に分散し、蝋状の殻を作り固着します。そうなると薬剤は効きません。1月の剪定で排除し、残ったものをワイヤブラシで取り除きます。


バラゾウムシ

  黒い米粒より小さな虫です。主に朝地面から蕾に登って行き蕾に穴をあけて産卵します。蕾は穴があいて枯れてしまいます。スミソンなどの殺虫剤の散布で駆除できます。枯れた蕾は産卵されていて放置すると孵化しますので、地面に落ちる前に切り取り、廃棄します。

ハキリバチ

被害は限定的ですので、放置して構わないです。

ミミズ

フトミミズも縞があるシマミミズもバラの根は食べませんので無害です。残飯から作った堆肥が土中にある場合はシマミミズが繁殖生存します。シマミミズがいる環境は最適な土壌ではないですが、シマミミズを駆除しても土壌の改良にはなりません。フトミミズがある程度いる土が最適な土壌で、ミミズが開ける穴は土中への通気口としての役割があります。ミミズの糞が肥料になる??ミミズの糞の量はわずかですし、完熟堆肥を施していればミミズをわざわざ増やす必要はないです。

テッポウムシ★★★

テッポウムシが株元に入るとよほど大きな株でない限り枯死しますので私が警戒しているのはテッポウムシのみです。鉢植えの枝の細い株は幼虫の食べ物が少ないためカミキリムシは産卵しないです。地植えの大きな充実した、枝が1cm以上ある株に産卵されます。8月以降株元におがくずのようなものが出ていれば中にテッポウムシがいます。中でどんどん大きくなりますので早めに駆除しないと株が枯死します。まず穴を見つけることですが、この穴は直径2‐4㎜と小さく、目視での確認が難しく苦労します。はりがね、キリなどで突いて穴を探します。穴がわかれば穴の中に殺虫剤を注入します。テッポウムシ専用の殺虫剤は成分はありふれたものですが、ノズルが長く穴の奥に注入でできて効果的です。カミキリムシは卵を産みつける前にその株の上の方の枝をぐるりとかじって味見しています。これを見つけた場合、その株元をしばらく注視してください。

おがくずが水で固まったものです。穴は見つけにくいです。ここまで大きな塊ですと内部はかなり食べられているということになります。涙;;

穴を見つけて上にたどっていったところです。左に回り込んで行ってこの裏に潜んでいました。この個体は変形フォークで物理的に処分できました。

目視では穴の発見が難しいので針金などで突いて探します。地植えの場合は鏡も使います。穴さえ発見できれば専用の殺虫剤のノズルを2,3cm差し込み噴霧します。


カミキリムシが成長して巣立った跡です。鉄砲で打ったように丸い穴が開きますので、テッポウムシと言います。この株はつるアイスバーグで大株になっていましたので問題なく咲いていました。

カミキリムシの食害です。おいしい形成層のみを食べます。産卵する前にはその株の味見をするようで、食害された枝を見つけた場合は株元からおがくずが出ていないか注意します

まだ、株元の枝も細かったので油断していたバーガンディアイスバーグ。既に末期で再生不能でした。


テッポウムシの防除

テッポウムシの予防駆除は難しく、通常量の有機リン殺虫剤の予防的噴霧では十分な効果が得られません。バラ園のように毎週薬剤を散布しエリア全体に昆虫を寄せつけないようにするという方法がありますが、個人の庭でそこまでするかどうかはお任せします。

パラフィンを展着剤として殺虫剤を株元に塗布する対策の効果検討しています。具体的にはスミソン200ー500倍液にアビオンEを添加します。パラフィン剤は雨水をはじくので薬剤を散布対象に長く滞留させる効果があります。この混合液を株元から高さ20㎝までのところに十分散布します。毎年テッポウムシは5~7株入りますが、2021年、22年この処理をした株には見つかりませんでした。6月と9月の2回のみです。唯一1株、薬液がかかっていなかったと思われる株元の裏側に産卵されました。引き続き効果を検討します。

 

病気

 黒点病、うどんこ病に使う薬剤は抗生物質です。有機リン殺虫剤に比べれば毒性は低いです。サリンも有機リン化合物です。

 手間をかけずに育てるには修景バラなど病気に非常に強い品種を選ぶことです。尚、害虫に強い品種はないですが、多少の被害にあっても元気よく成長する品種はあります。やはりこれも修景バラになります。

黒点病 地植え★★★

 雨水が土表面で跳ね返り葉に付き発生すると言われています。ベランダ栽培ではほとんど発生しないです。庭で育てている場合は薬剤散布しますが完全に防ぐのは難しいです。黒点病は進行すると葉が落ちますが、黒点病が付いてもそれが原因で葉が落ちるのではなく、夏の猛暑により水分蒸発を少なくするため、バラが自ら葉を落としていると考えています。秋前に切り戻して新しい枝と葉が出てくるような強い株を育てることが大切です。庭で地植えであればうどんこ病より黒点病の方が問題になります。発生しやすい梅雨時は薬剤散布しても抑え込むことは無理です。葉が落ちても9月からまた芽、葉が出てきてたくさん咲きますし、新しい葉の方が光合成の効率がいいです。

 新しい葉は表面は水をはじく性質があり黒点病の発生も少ないです。2,3か月たつとこの水をはじく性質が弱くなり、黒点病も増えます。アビオンEはパラフィンで水をはじきますので、フルピカ、ダコニールなどにアビオンE★★★を混ぜることによって黒点病はかなり防げます。

うどんこ病 ベランダ★★★

 風通しの悪いマンションのベランダでは頻発するので梅雨の時期は薬剤散布が必要でしょう。知られていないですが初期であれば指先でなでるだけで治ります。指先の他の菌に駆逐されるのだと思います。非常に弱い菌です。

パラフィン★★★

   商品名はアビオンEです。現在のろうそくの原料で、水性ですが乾くと水をはじきます。ダコニールなどの殺菌剤、スミソンなどの殺虫剤と混合して散布すれば薬剤が葉に長く滞留し効果が持続します。雨水をはじくことによって黒点病の菌を付着しにくくします。

がん腫・ネコブ・ネコブセンチュウのネコブ

 いずれも発生率は低いです。この3つは似ていますが別の原因です。ネコブをがん腫と間違えて廃棄しなさい!とアドバイスしている人がいます。この2つは廃棄しなくても助かる可能性は十分あります。どれも簡単な病気とは言えないですが救えないことはないと思います。

 購入した大苗での発生率は2%です。切除し再度植えつけ育てましたが、問題なく成長しました。ネットに書いてあるように他の株にどんどん伝染するという経験はないです。ネットでは焼却、消毒しないと蔓延すると記載ありますが、蔓延したという報告は見たことがないです。どんどん伝染したというのであればがん腫ではなく下のネコブセンチュウです。がん腫の原因となるアグロバクテリウム・ツメファシエンス は一般の土壌にも生息していますから、それを”消毒”などで絶滅させるという考えは的はずれだと思います。日本の台木に使われるノイバラは感染しやすく、がん腫の写真は見た目も醜いのでネットでの格好の話題になります。発生頻度も低く、伝染もしにくいのでさほど危機を感じていません。連作により土中の菌のバランスが崩れると発生しやすくなるという説が有力です。

 ネコブは一番救いやすいでしょう。ネコブを切り捨て再度植えつけるのですが、土には牛糞堆肥を入れ好気性菌が多く繁殖しネコブを成長させないような土壌づくりが必要です。

 ネコブセンチュウによるネコブは直径1cm以下の小さなコブが多く見られ、一つ一つは大きくならないです。連作をしてネコブセンチュウが繁殖してしまったところに植えたか、苗についてきたかです。庭の土中のセンチュウを駆逐するのは難しく、怖い虫です。鉢であれば全ての土をビニール袋に入れて夏に日干しすれば死にます。

 

器具の殺菌

 がん腫の切除後に剪定ばさみ、ナイフの殺菌をした方がいいのですが、道具であれば70%以上の消毒用アルコールが一番広範囲に効き最強です。但し、脱水作用があるため樹皮のかたい部分を除き、植物には直接使用できません。園芸には使われてませんが切り口などの消毒にはヨード(イソジン)が最強かつ広範囲に効果を示します。ビストロンは単に危険なだけ、木酢液は効果弱いですNG

 

異常サインを覚える

 一度見て経験した害虫、病気は2回目以降見つけやすいです。病気、害虫の写真をよく見て覚えておくと見つけやすいですハダニを表からみても「色が薄くなった?むらがあるかな??」、冬のカイガラムシのコロニーをみても「白いのが付いてる?」程度で見逃してししまいます。

石灰硫黄合剤 NG

 2010年までは害虫、病気を防ぐ強力な殺虫殺菌剤的な用途で使用されていましたが、安全性の問題で一般園芸家が購入しにくいようにされています。何故危ないか、どうしたら危険なのかわからない方は使用しないようお願いします。2つありますが、”してはいけないこと”をここに記載すると悪用されるため記載できないです。

 決して石灰硫黄合剤を使用することがバラ栽培の熟練者ではなく、逆に使用しないと育てられない初心者と考えてください。一般家庭では必要なく、果樹園農家の方が収穫に大打撃を受ける害虫の大発生を防ぐために使用されます。